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絶対に死なない男

ある男が、まるで世界の真理を知ったかのような面持ちで語りかけた
「俺は、絶対に死なないんだ」

「は?どういうことなんだよ」
一瞬意味が分からなかったが、どうやら言葉通りの意味のようだ
「だから死なない、というより、死ねないんだ」
「今からその証拠を見せてやる」

男は一つのロープを取り出した。
このロープで首を吊るということらしい

「おい、冗談はよせ」
「まぁ、落ちつけ。実は、俺はロープで首を吊って3回も生き残ったんだ。
 これが偶然だと思うか?言わば、一種の手品さ」
「もし、その手品が失敗して死んだらどうすんだよ」
「いいや、死なない。これは絶対に失敗しない、失敗出来ない運命の手品なんだよ」

男は度重なる制止を振り切り、ロープで首吊りを決行した。
結局、男は首を吊って死んでしまった。
こんな馬鹿な手品のために、警察のお世話になるわ、葬式やらで
他の人の迷惑も考えろという話だ

そして後日、遺書が発見された。
そこには、こんな馬鹿げた手品をした動機が書かれていた。
彼が本当に愚か者であることがはっきりと分かった。


「この遺書が他の人に読まれているということは、
 私はこの実験に失敗したということでしょう。
 しかし、私にとって、この実験は決して失敗していないのです。
 この世の中は単一世界なんかではなく、並行世界なのです。
 あらゆる可能性が分岐して、
 あらゆる世界が同時に存在するパラレルワールド。
 つまり、私という意思も一つではなく、同時にあるのです。
 首を吊って死ぬ確率は確かに高いです。
 しかし、それでもロープの紐が外れる、
 ロープが落下の衝撃で切れるという可能性がわずかにあるのです。
 残念ながら、この世界では私の意思は途切れてしまいましたが、
 低確率でも生き残る可能性がある以上、
 私は別の世界で生還しているのです。
 私の意思はただ一つであると自覚している以上、
 私の意思はこの世界には行かず、
 別の世界に繋がって存在しているのです。
 そうでなければ、
 私が3回も首吊りで生還した理由に説明がつきません。
 私はどんな死の危険があろうと、絶対に生きのびる運命なのです。
 安心してください。私は別の並行世界で生きています。」


彼は、多世界解釈の信仰者であり、
それを確かめようとしたが故、この様な暴挙に出たというわけだ

彼の考えが正しいとするのならば、
この世界は、彼が首吊りで3回も生還した
超低確率の中にいる世界だということになる

他の世界だったら、1回や2回の首吊りの段階で既に死んでいて
近所で変な自殺をした男として名前が通っていたということなのか

どちらにしろ、この世界では既に死んでしまっている以上、
他の世界で元気に生きている彼を想うしかない

しかし、まてよ
「低確率で生きのびる可能性があるなら生きのびる」ということなら、
寿命が来て死ぬ段階に来ても、
「医療技術が発展して寿命が来ない可能性」
「地球が無くなっても、別の星に移住して生きる可能性」も、
信じられないほどの低確率だが、確実に0%とは言い切れない

もし多世界解釈が正しいのならば、
私は永遠に延命され、
私は永久に死ねないのではないだろうか・・・・

首吊りを3回も生き残ったと聞いて、背筋が凍った
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